AI のサーバールームの電力消費があまりに速く伸び、多くの地域で送電網が追いつかなくなってきた。そこでテック大手は原子力に目を向けた。Amazon、Google、Microsoft、Meta はいずれも原子力に投資したり契約したりしており、その中で最もよく出てくるキーワードが SMR だ。
この記事では、SMR とは何か、AI がなぜそれを必要とするのか、各社がどこまで進んだのか、そして米国の AI 向け電力がいつ供給されるのかを平易に解説する。データセンターと電力の関 のエネルギー深掘り版だ。
SMR とは何か?
SMR の正式名称は Small Modular Reactor、小型モジュール炉だ。国際原子力機関は一般に、これを「単一モジュールの電気出力が 300 MWe 以下」の原子炉と定義する。
従来の原発は1基でしばしば 1000 MW を超え、現場で個別に建設し、完成まで十数年かかる。SMR はその逆を行く:工場で標準化されたモジュールを予製し、現場へ運んで組み立て、その後もブロックのように段階的に増設できる。
たとえるなら、従来の原発は工事現場でゼロから高層ビルを建てるようなもの、SMR は予製したコンテナハウスを現場へ運んで組み合わせるようなものだ。ただし「モジュール化すれば安くなる」はいまも工学上の仮説で、最初の発電所が実際にできて初めて確かなものになる。
なぜ AI データセンターは原発を奪い合い始めたのか
まず量を見よう。国際エネルギー機関(IEA)は2026年4月、世界のデータセンターの電力使用が2024年に約 415 TWh、2025年に約 485 TWh で、2030年には約 950 TWh に達すると見積もった。さらにおよそ倍になる計算だ。
次に「要求の厳しさ」を見よう。AI のサーバールームが求める電力は、24時間途切れず、低炭素で、長期契約で供給を確保できるものでなければならない。風力や太陽光は天候次第、天然ガスには炭素排出がある。原子力はちょうどこの位置を埋める:安定し、低炭素で、長期契約が結べる。
SMR 事業者と大手の原子力布石
ここで取り上げる米国の事業者はいずれもまだ導入段階にあり、大規模な商業供給には至っていない。
| 事業者 | 進捗(2026年10月時点) |
|---|---|
| NuScale | 2025年5月に米国原子力規制委員会(NRC)の設計認可を取得。認可を得た唯一の SMR 設計で、単一モジュール 77 MW。テネシー川流域開発公社(TVA)との電力購入契約はまだ確定していない |
| Kairos Power | Hermes 2 実証発電所が2026年4月に着工。最大 50 MW を TVA の送電網に送り、Google との契約で最初の供給となる |
| TerraPower | Natrium 発電所が2026年3月に NRC の建設許可を取得し、2030年完成予定。約 345 MW で、SMR で一般的な 300 MW のしきい値を超えている |
| X-energy | Long Mott 発電所(Xe-100 を4基)の建設許可はなお NRC の審査中で、まだ発行されていない |
| Oklo | 2026年6月に米国エネルギー省が Aurora-INL 発電所の予備安全解析を承認。Fission Today の報道によれば、2028年の運転開始が目標 |
テック大手の契約:Amazon は X-energy に投資し、2039年までに 5 GW を超える新規原子力を目標;Google は Kairos と契約し、2035年までに 500 MW の配備を目標;Meta は2026年1月に Vistra、TerraPower、Oklo と契約し、2035年までに新旧合わせ最大 6.6 GW の原子力を支える目標を掲げた。Microsoft は Constellation と20年の電力購入契約を結び、スリーマイル島1号機(現名称 Crane、835 MW。既存の大型原発で SMR ではない)を再稼働させる。2026年9月に連邦の最終環境評価を得ており、Constellation は2027年の再稼働を目標としている。
これらの多くは投資や調達の協定であり、電力がすでに届いているわけではない。
タイムライン:米国の計画の多くは2030年代が目標
2026年には確かに進展があった。米国エネルギー省の試験プログラムでは、8月までに5基の試験炉が臨界(核分裂反応が自律的に続く状態)に達した。ただしこれらは試験用で、送電網には電力を供給しない。米国の SMR の商業供給計画の多くは、2030年代を目標にしている。
したがって2026年から2030年の AI サーバールームの電力不足は、主に送電網の拡張、天然ガス、再生可能エネルギー、既存原発の再稼働と運転延長、さらに蓄電と需要調整で補うことになる。
台湾の役割
台湾では原子力は政策上敏感な議題だ。馬鞍山原発(第三原発)2号機は、40年の運転許可の期限切れにより2025年5月に停止した。
国家原子能科技研究院は SMR 研究を始めている。その2026年4月の評価によれば、海外の軽水型 SMR の商業運転が順調に進み、台湾がライセンスを取得できたとしても、台湾初の SMR 電力は最も楽観的なケースで2035年になる。しかも台湾には現在、原子炉本体の設計能力がない。参入しやすいのは重電と部品、たとえば変圧器、開閉装置、ケーブル、制御システムだ。
市場では重電や送電網関連の企業が「原子力関連銘柄」に入れられることが多いが、これは送電網とサプライチェーンのテーマに近い。名前が挙がっても原子力の受注を得たとは限らず、投資助言でもない。
小企鵝(Penchan)のまとめ
原子力が再び注目されるのは、AI のサーバールームが安定し、低炭素で、長期契約が結べる電力を必要としているからだ。米国の SMR による供給計画の多くは2030年代が目標だ。ここ数年の不足はなお送電網、天然ガス、再生可能エネルギー、既存原発で補う。
関連ニュースを見るときは、「契約、許可取得、着工、実際の供給」が四つの別々の段階だと区別しておこう。
AI サーバールーム全体の電力の天井を見たいなら データセンターと電力 を、チェーン全体を見たいなら サプライチェーン総まとめ に戻ってほしい。