Perplexity は「回答エンジン」の会社です。質問すると、ウェブで情報を探し、そのまま答えにまとめてくれます。このやり方で急成長した一方、2024 年以降、米国、日本、ブラジルのメディアから次々と提訴され、さらに Amazon からも AI エージェントをめぐって訴えられました。
これらの訴訟が争う点は同じではありません。出版社は「コンテンツを持っていかれた」と訴え、Amazon は「システムに入り込まれた」と訴えています。以下で分けて整理し、誰が本当に提訴し、誰がしていないのかもはっきり示します。まずこの会社を知りたい方は、Perplexity とはどんな会社かから始めてください。
出版社の著作権戦争:誰が訴えて、誰は訴えていないか
2026 年 10 月時点の一覧です。
| 相手 | 法的措置 | 進捗 |
|---|---|---|
| Dow Jones、NYP Holdings(The Wall Street Journal と New York Post の出版社) | 2024 年にニューヨーク連邦地裁に提訴 | 2025 年 8 月に裁判所が Perplexity の却下申立てを退け、証拠開示に入った。公判前協議は 2026 年 12 月 14 日 |
| ブリタニカ百科事典、Merriam-Webster 辞書 | 2025 年 9 月に提訴 | 証拠開示中 |
| 2025 年 10 月に提訴。防護を回避してデータを収集したと主張(一般的な著作権ではなく DMCA に基づく) | 2026 年 7 月に裁判所が Perplexity の却下申立ての大半を退けた | |
| ニューヨーク・タイムズ、シカゴ・トリビューン | 2025 年 12 月にそれぞれ提訴 | Perplexity は「生成コンテンツ」に関する一部の主張の却下だけを求め、「収集・複製」という中心的な主張には異を唱えていない。判断はまだ |
| CNN | 2026 年 5 月に提訴 | 判決はまだ |
| 読売新聞(東京) | 2025 年 8 月に提訴、約 21.68 億円を請求 | 2026 年 5 月に第 1 回口頭弁論。Perplexity は請求棄却を求めた |
| 日本経済新聞、朝日新聞(東京) | 2025 年 8 月に共同提訴、それぞれ 22 億円を請求 | 2026 年 5 月に第 1 回口頭弁論。Perplexity は請求棄却を求めた |
| Folha de S.Paulo(ブラジル) | 2026 年 8 月に提訴 | 判決はまだ |
| Condé Nast(Wired、Vogue の親会社) | 侵害停止通知を送っただけ | 提訴していない |
| Getty Images(ストックフォト) | 提訴していない | 2025 年 10 月に逆にコンテンツライセンス契約を締結 |
これらの訴訟が争うのは「AI がコンテンツを持ち去ること」
出版社の主張は一貫しています。Perplexity は、出版社が費用をかけて作った記事を無断で収集・複製して自社の回答にまとめ、読者が元のサイトを訪れる必要をなくしている、というものです。
これを「ゼロクリック(zero-click)」と呼びます。以前は検索で記事を見つけると、ニュースサイトを開いて読み、サイトはその訪問から広告収入を得ていました。回答エンジンが要点を直接渡してしまうと、メディアは訪問者と収入を失います。
Perplexity の立場は、公開情報を整理して出典リンクを添えるのはフェアユースだ、というものです。裁判所はこの中心的な争点にまだ判断を示していないため、これらの訴訟は「AI が他者のコンテンツをどこまで使えるか」の先例になります。関連記事:回答エンジンとは何か。
Amazon の訴訟:AI はあなたに代わって他者のシステムにログインできるか
Perplexity の Comet ブラウザにはエージェント機能があり、ユーザーに代わって Amazon アカウントにログインし、自動で価格を比べて注文できます。Amazon はこれを自社システムへの無断アクセスだとして提訴しました。
2026 年 3 月、カリフォルニア州の地方裁判所は、Comet のエージェントが Amazon のアカウント内の購入エリアに入ることを禁じる差止命令を出しました。2026 年 8 月 4 日、第 9 巡回控訴裁判所はこの差止命令を取り消しました。理由は、この事件の事実関係のもとでは、Amazon に「アクセス」したのは Perplexity ではなくユーザー本人であり、AI アシスタントは「人ではなく道具」だというものです。裁判所は、この判決が「AI エージェントを規律する新たな法制度をつくるものではない」とも明言しています。
つまり Perplexity が勝ったのは差止命令の段階で、事件は地方裁判所に差し戻されました。中心的な問いはまだ残っています。あなたが AI に「Amazon でこれを買ってきて」と頼むとき、それはあなたの道具なのか、それともプラットフォームが認めていない侵入者なのか。その答えは、あなたに代わって航空券を予約し、診察を予約し、買い物をしようとするあらゆる AI エージェントに影響します。関連記事:Comet とは何か。
法廷の外の争い:クローラー問題と収益分配
2025 年、ネットワークインフラ企業の Cloudflare は、Perplexity が「隠密クローラー」で身元を偽り、ウェブサイトの「収集禁止」設定を回避していると指摘し、技術的な手段でブロックしました。Perplexity はこれを否定し、Cloudflare が第三者サービスのトラフィックを自社のものと誤認したと反論しています。
Perplexity は歩み寄りの姿勢も見せています。「Comet Plus」という仕組みで、サブスクリプション収入の 8 割を提携出版社に分配しており、実質的にはお金を払って利用許可を得る形です。交渉がまとまらなかったメディアは、最終的に法廷に向かいました。
いまだ未確定の部分
- 中心的な争点に判決はない:2026 年 10 月時点で、「AI によるコンテンツ収集は侵害にあたるか」について判決が出た出版社の訴訟は一つもありません。
- Amazon 訴訟は地方裁判所へ:差止命令は取り消されましたが、事件そのものはまだ判決が出ていません。
- 賠償も和解もない:現時点で、賠償額や和解が確定した訴訟はありません。
この記事は、公開されている訴訟の進捗をわかりやすく整理したもので、法的助言ではありません。事件の状況は 2026 年 10 月時点のものです。
小企鵝(Penchan)のまとめ
Perplexity は二つの力に挟まれています。上流のコンテンツ側は「自分のものを持っていった」と訴え、下流のプラットフォーム側は「自分の縄張りに入り込んだ」と訴えています。これは中間層の企業にとって最も厄介な立ち位置です。コンテンツとサービスをつなぐからこそ、両側の反発を同時に受けます。
これらの判決の影響は Perplexity 一社にとどまりません。著作権訴訟は回答エンジンが他者のコンテンツをどこまで使えるかの線を引き、Amazon 訴訟は AI エージェントがあなたに代わってさまざまなサービスにログインして作業できるかどうかを左右します。