AI のニュースを見るたび、「どこそこの会社がまた数万基の GPU を買った」と耳にする。なぜ GPU で、より高級そうな CPU ではないのか。
この記事では GPU を平易に説明する。それが何か、なぜ大規模 AI でよく使われるのか、市場を誰が主導しているのか、そして H100 から Vera Rubin までの世代の違いだ。これは AI ハードウェアサプライチェーン総まとめ の第1関「AI チップ」の入門版である。
GPU とは何か?
GPU の正式名称は Graphics Processing Unit、グラフィックス処理装置だ。もともとゲームと 3D 描画のために設計され、構造の単純な小さいコアを大量に詰め込み、数千・数万の似た計算を同時に処理できるのが特徴である。
たとえるなら、CPU は高等数学を解く教授で、一度に1つの難問に集中する。GPU は足し算と引き算しかできない千人の小学生で、一人ひとりが小さな部分を受け持てば、全員で計算したほうがずっと速い。AI が必要とするのは、まさに数億の単純な問題を同時に解くことだ。
コアデータのスナップショット
シェアの数字は調査機関や政策機関の推計なので、規模感をつかむ程度に見てほしい。
| テーマ | 数値 | 時点/性質 |
|---|---|---|
| AI 用 GPU における NVIDIA のシェア | 約8割以上(クラウドの自社開発 ASIC は別計上、数え方で異なる) | 2025〜2026 年、調査/政策機関の推計 |
| NVIDIA データセンター売上高(通期) | FY2026 約 1,937 億ドル | NVIDIA 公式決算 |
| NVIDIA データセンター売上高(四半期) | FY2027 第2四半期(2026-07-26 まで)890 億ドル、前年同期比 117% 増 | NVIDIA 公式決算 |
GPU と CPU はどう違うのか
違いはコアの数と役割分担にある。CPU はコアが少ないが、一つひとつが強く万能で、オペレーティングシステムやプログラムのロジックのように、一歩ずつ判断しながら進める仕事を得意とする。GPU は小さめのコアを大量に詰め込み、「多くのことを同時にこなす」総スループットを追求するので、行列演算、画像処理、ディープラーニングに向く。
AI サーバーの中で両者は分業するパートナーだ。CPU はデータの割り振り、プログラムとネットワークの管理を担い、GPU はモデルの最も重い演算を走らせる。より詳しい比較は GPU と CPU の違い を読んでほしい。
大規模 AI で GPU がよく使われる理由
AI モデルの学習と推論は、突き詰めれば膨大な行列演算を同時に進めることだ。GPU の中では2種類のコアが特に重要になる。CUDA Core は大量の汎用的な小さな演算ユニットで、一般的な並列演算を受け持つ。Tensor Core は行列の掛け算の高速化に特化し、FP16、FP8、FP4 といった低精度フォーマット(少ないビット数と引き換えに演算を速くする)に対応する。
そのかたわらには、高速の HBM(広帯域メモリ)も必要だ。モデルの重みとデータを十分に速く送り込み、演算コアがデータ待ちで遊ばないようにするためである。このメモリについては HBM の関 を見てほしい。
AI GPU 市場:誰が供給しているのか
この関は NVIDIA に高度に集中している。その堀はチップだけでなく、CUDA というソフトウェアのエコシステムにある。開発者が書いたプログラムはみなその上で動き、一式まるごと他社へ移すコストは高い。
主な挑戦者は AMD だ。Instinct MI350 シリーズはすでにクラウドで出荷され、2026 年 7 月には MI455X(1基 432GB HBM4)と、72 基の GPU で構成するラック Helios を投入した。Google、AWS、Microsoft などのクラウド大手は自社で ASIC を開発し、自前のクラウドの中でコストを抑えて差別化を図る。この筋は ASIC の関 を参照してほしい。
なお、シェアと売上高は新製品、決算、数え方によって変わる。ここで描いているのは産業の構図であり、個別銘柄の評価ではない。
主流 AI GPU 世代の一覧
| 世代/製品 | 位置づけ | メモリ |
|---|---|---|
| H100(Hopper) | 以前の学習/推論の主力 | 80〜94GB HBM |
| H200(Hopper) | Hopper のメモリ強化版 | 約 141GB HBM3e |
| B200(Blackwell) | Blackwell 世代の主力 | 約 180〜192GB HBM3e(SKU による) |
| B300(Blackwell Ultra) | メモリをさらに増量 | 約 288GB HBM3e |
| GB300 NVL72 | Grace CPU と 72 基の Blackwell Ultra GPU によるラック単位のシステム | ラック全体で約 20TB |
| Vera Rubin | Blackwell の次の世代 | 1基 288GB HBM4、NVL72 ラック全体で 20.7TB |
2026 年 8 月時点で、Blackwell はなお NVIDIA の売上の圧倒的大部分を占めている。Vera Rubin は 2026 年 8 月に量産出荷が始まった。
押さえるべきトレンドは2つある。1つはメモリがどんどん大きくなり、帯域がどんどん広がること。もう1つは「単体のチップ」から「ラック単位のシステム」へと移り、数十基の GPU を高速相互接続で束ねて1台のスーパーコンピューターにすることだ。旗艦世代の詳細は、続けて Blackwell の関 を読んでほしい。
この関における台湾の役割
GPU は NVIDIA がアメリカで設計するが、実際の製造は台湾に大きく頼っている。Blackwell は TSMC がカスタムした 4NP プロセスで生産され、CoWoS などの 先端パッケージング で GPU と HBM を結びつけ、最後に鴻海(Foxconn)、廣達(Quanta)、緯創(Wistron)などの台湾メーカーがラック単位の AI サーバーに組み上げる。NVIDIA が 2026 年 5 月に公表した Vera Rubin の量産パートナーにも、これらの台湾メーカーが含まれる。1基の GPU がシリコンウェハーから使えるシステムになるまでの道のりの大半は、台湾で進む。
小企鵝(Penchan)のまとめ
GPU の本領は並列演算だ。大量の小さなコアが同時に動き、AI の「膨大な単純計算をいっせいにこなす」需要にちょうど合う。これが大規模 AI で GPU がよく使われる理由である。
この関は NVIDIA が主導し、AMD とクラウドの自社開発 ASIC が二方向から追う。そしてどの GPU の背後にも、TSMC のプロセス、先端パッケージング、台湾のサーバー組み立てがつながっている。GPU を理解すれば、AI ハードウェアのサプライチェーン全体を読み解く入場券を手にしたことになる。