ASML の関 で扱ったのは ASML という会社で、この記事ではそれが世界で独走する技術、EUV を取り上げる。最先端チップを作るうえで避けて通れない装置で、AI ハードウェアサプライチェーン総まとめ のうち ASML の関の技術編にあたる。


EUV とは何か

EUV の正式名称は Extreme Ultraviolet Lithography、極端紫外線リソグラフィだ。核心は1つの数字、波長わずか13.5ナノメートルにある。

リソグラフィとは回路パターンをウェハに「焼き付ける」工程で、光の波長が短いほど線を細く描ける。前世代の主力 DUV(深紫外線)は193ナノメートル、EUV は一気に13.5ナノメートルまで縮めた。DUV で非常に密なパターンを描くには、同じ層のパターンを何枚かに分け、別々のマスクで複数回露光する(マルチパターニング)必要があり、工程・コスト・位置ずれのリスクが増える。EUV は最も重要な数層でこの分割を減らせる。

よくある誤解は「EUV がなければ先端チップは作れない」というものだ。実際には EUV は主に最も複雑な重要層で使われ、一部のノードは今も DUV のマルチパターニングで力技で作れるが、コスト・サイクル・歩留まりへの圧力は大きい。だから7nm 以下でコスト競争力を持つには、ほぼ EUV に頼ることになる。


原理:錫の液滴から打ち出す光

EUV 光は電球で出せるものではない。ASML のやり方は、直径約25マイクロメートルの溶融した錫の液滴を高速で噴き出し、まず低エネルギーのレーザーで押し潰し、次に高エネルギーのレーザーでプラズマ化して、瞬時に EUV 光を発するというものだ。これを毎秒約5万回繰り返す。

さらに厄介なことに、EUV は空気にさえ吸収されるため、光路全体を真空の中に置かなければならない。レンズで屈折させることもできず、精密な多層膜ミラーを重ねて反射・集光させるしかない。どの工程も極限まで難しく、だから世界で ASML 一社だけが作れるのだ。


Low-NA と High-NA

EUV 装置は2つの世代に分かれ、NA(開口数)が大きいほど細かく焼き付けられる。

Low-NA EUVHigh-NA EUV
機種NXE シリーズEXE シリーズ
開口数0.330.55
解像度約13ナノメートル約8ナノメートル
1台の価格(報道ベースの推計)約2億ドル級約4億ドル

Low-NA は7・5・3・2nm の先端プロセスの量産主力で、High-NA はさらに細かく焼き付けられる。表の価格はメディア報道と市場の推計だ。2025年に ASML が売上高を計上した EUV 装置は48台で、うち4台が High-NA だった。


誰が使っているのか、そして輸出管理

3大先端プロセスメーカーはいずれも EUV に頼っている。

  • TSMC:2019年の N7+ が世界で初めて EUV を量産に導入したプロセスで、その後 N5、N3 で大量に使い、2nm(N2)は2025年第4四半期に量産に入った。2026年9月、TSMC は2030年から先端ノードで High-NA を量産導入すると発表し、ASML と組んで12インチのフォトマスクを推進している。
  • Samsung:7LPP から EUV を使い、メモリ(DRAM)にまで導入している。
  • Intel:Intel 4 から EUV 量産を始めた。2026年7月の時点で、Intel はすでに Panther Lake(18A)の一部のチップ層を High-NA で量産しており、ASML はこれを High-NA で量産された初のロジック製品としている。

もう一面が輸出管理だ。EUV 装置はオランダと米国の管理対象で、中国の顧客に販売されたことは一度もない。先端プロセスの重要な層は EUV なしでは成り立たず、その EUV は ASML 一社しか作れない。こうして EUV は米中チップ攻防の鍵となる結節点になり、チップ戦争 と 輸出管理 の2本の核心でもある。本記事は管理の事実を述べるだけで、政治的な判断はしない。


サプライチェーンとメーカーの役割

EUV は ASML が統合し、光源技術は ASML が買収した Cymer に由来し、ミラーなど最も重要な光学はドイツの ZEISS(ツァイス)が独占供給する。この2つが EUV で最も複製が難しい部分だ。

日本企業にも、装置そのものとは異なる役割がある。HOYAは、回路パターンをウェハへ転写するフォトマスクの基板となるEUVマスクブランクスを開発・供給している。レーザーテックは、EUVマスクブランクスの欠陥を検査・評価する装置を手がける。いずれも露光装置を作るのではなく、マスクの材料と品質検査を支える役割だ(HOYA、レーザーテック)。

台湾メーカーの役割

台湾メーカーの多くは周辺で関わっている。**Gudeng(家登精密)**は EUV のレチクル POD(レチクル搬送ボックス)を作り、ASML の認証を得た数少ない台湾メーカーの1つで、役割は比較的明確だ。市場が名前を挙げるその他のマスク・材料・エンジニアリングサービス企業は、多くが業界メディアやアナリストの推測で、「あり得る役割」を示すにすぎず、受注の獲得や恩恵の度合いを意味するものではない。本記事は産業上の役割を述べるだけで、個別銘柄のランク付けはせず、投資助言を構成するものでもない。


小企鵝(Penchan)のまとめ

EUV の重みは3つのことが重なることから来ている。先端プロセスの最も難しい数層に必要で、世界で ASML だけが作れ、しかも輸出管理の対象である。どれも単独で決定的だが、重なり合うことで EUV は1台の装置から「先端プロセス生産能力」への地政学的なゲートへと変わる。誰が使えるか、どの世代を使えるかが、ある程度、誰が最先端のチップを作れるかを決めるのだ。

ASML という会社については ASML とは を、EUV で焼き付けたチップがどう製造されるかは ファウンドリ と 先端プロセス を読んでほしい。チェーン全体を振り返るなら、サプライチェーン総まとめ に戻ってほしい。