「AI 関連銘柄」の下には、1本のサプライチェーンがまるごと詰まっている。チップを設計する者、受託製造をする者、装置を売る者、メモリを作る者、サーバーを組む者、そしてクラウドとモデル企業まで。銘柄リストを追うだけでは目が回る。
先に資金の流れを押さえるほうがわかりやすい。この記事はクラウド大手の設備投資を起点に、1ドルがどの工程を通り、どの層の利益が厚く、どの層が薄いのかを追う。
資金はどこから来るのか:クラウド大手の設備投資
源流はクラウド大手の「設備投資」(capex、装置を買いデータセンターを建てる長期投資)だ。
2026年7月時点の各社の公式ガイダンスでは、Amazon が約2,200億ドル、Alphabet(Google)が1,950~2,050億、Microsoft が約1,750億、Meta が1,300~1,450億で、4社の2026年合計は約7,200~7,450億ドルになる。この資金の大部分は AI チップの購入とデータセンターの建設に充てられ、サプライチェーン全体で分け合うパイになる。
コアデータのスナップショット
以下は会社全体の利益指標の比較だ(2026年9月までに発表された決算)。
| 工程 | 代表企業 | 粗利/利益の概況 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 資金の源流 | Amazon、Alphabet、Microsoft、Meta | 2026年の設備投資ガイダンス 合計約7,200~7,450億ドル | 公式ガイダンス |
| GPU 設計 | NVIDIA | 粗利率 約75%(FY27 第2四半期) | 公式決算 |
| ウェハ受託 | TSMC | 粗利率 67.7%(2026 Q2) | 公式決算 |
| 露光装置 | ASML | 粗利率 54.0%(2026 Q2) | 公式決算 |
| HBM メモリ関連株 | Micron、SK hynix | Micron 粗利率 86.8%(FY26 第4四半期);SK hynix 営業利益率 76%(2026 Q2) | 公式決算 |
| 完成機 ODM | 広達 Quanta、緯穎 Wiwynn | 粗利率 約5%(広達)、9.3%(緯穎)、2026 Q2 | 公式決算/説明会 |
| モデル企業 | OpenAI、Anthropic | 売上は急成長、なお大量投資中 | 公式/メディア |
資金フロー地図:1ドルの旅
川上、シャベルを売る側(利益が最も厚い)。 資金はまず AI チップへ流れる。GPU の最大手 NVIDIA が設計し、TSMC が受託製造する。TSMC は ASML の露光装置を使い、チップは HBM 広帯域メモリ と組み合わされる。この層の粗利率は5割から8割超。「シャベルを売る」というたとえはここから来ている。どのモデルが勝とうと、チップや装置を売る側が先にお金を受け取る。
川中、完成機を組み立てる側(利益が薄い)。 チップモジュールは台湾の AI サーバー ODM に渡り、完成機・完成ラックに組み立てられる。2026年第2四半期、広達と緯穎の売上は前年比2割超から2倍以上まで伸びたが、粗利率は1桁にとどまった。
周辺の工程。 完成ラックにはさらに 冷却と液冷、電源、ネットワーク、先端パッケージング が必要で、多くの台湾メーカーが参加しており、利益の厚薄はそれぞれ異なる。
川下、資金を使うモデル企業。 チェーンの末端は、計算資源を買ってモデルを訓練する OpenAI や Anthropic だ。FT の報道によれば、OpenAI の2026年9月末の年換算売上は約500億ドル(自社基準)。Anthropic は2026年5月に470億ドル超と公式に発表し、Bloomberg の報道によれば7月末には650億ドルを超えた。両社はパートナー経由の販売の計上方法が異なるため、数字は単純に比較できない。WSJ の報道によれば OpenAI はなお大幅な赤字で、Anthropic は2026年第2四半期に調整後営業利益が黒字化したと報じられている(株式報酬を除く)。両社に GPU を貸す neocloud の CoreWeave は、2026年第2四半期の売上が25.8億ドルで、なお6.3億ドルの純損失だった。
なぜ粗利にこれほど差が出るのか
鍵は「参入障壁」と「ビジネスモデル」だ。川上のチップ、装置、メモリを作れる会社は数えるほどしかなく、価格決定力がある。川中の組み立てを担える会社は比較的多く、競うのは規模・効率・納期で、加工の利益はもともと薄い。
ビジネスモデルも粗利率を薄める。ODM の売上には右から左へ流れる高価な部品が含まれることが多く、部品の価値は売上に計上されるが、本当に稼ぐのは組み立てと統合の部分だけだ。緯穎がその例で、2026年4月から一部顧客のメモリを「代理調達」方式に切り替え、その金額を売上にも原価にも計上しなくなった。新製品のエンジニアリングサービス(NRE)収入も加わり、第2四半期の粗利率は9.3%に上がった。計上方法が変われば、粗利率も変わる。ODM は、どの部分で稼いでいるのかを見る必要がある。
「AI 関連銘柄」の見方
市場は上の各層の関連企業をすべて「AI 関連銘柄」に入れる。各社が資金フロー地図のどの層に立ち、その層の利益が厚いか薄いかを理解するほうが、銘柄リストを追うより役に立つ。ただし粗利率は過去の決算であって未来を意味しない。「ある台湾メーカーがある国際大手に対応する」という説の多くは機関投資家の推測で、会社の公式発表ではない。本記事はサプライチェーンの分業と資金の流れを描くだけで、受益銘柄の整理も個別銘柄の順位付けもせず、投資助言を構成しない。
小企鵝(Penchan)のまとめ
チップメーカーとクラウドが互いに投資し合う資金網を見たいなら AI 循環投資地図、バブルかどうかを見たいなら AI はバブルか、NVIDIA がどう製造を台湾メーカーに外注しているかを見たいなら NVIDIA サプライチェーン を読んでほしい。ハードウェアチェーン全8関を見るなら、AI ハードウェアサプライチェーン総まとめ に戻ってほしい。
川上でシャベルを売る側は技術的な参入障壁で高い粗利を取り、川中の組み立ては規模で薄利を競い、川下のモデル企業はなお大量投資を成長に換えている。AI 関連銘柄を見るなら、まずその会社がチェーンのどの層にいるかを見つけ、次にその層の粗利構造を見る。テーマのリストを追うより実際的だ。